非蛍光分子の光熱緩和局在顕微鏡による超解像イメージング

Super-resolution imaging of non-fluorescent molecules by photothermal relaxation localization microscopy

Pengcheng Fu, Wanlin Cao, Tianrun Chen, Xiangjie Huang, Taoran Le, Shiyao Zhu, Da-Wei Wang, Hyeon Jeong Lee, Delong Zhang

背景

 光学イメージング技術の進展は、回折限界を超えた構造および動態の解析において大きなブレークスルーをもたらしている。特に、蛍光ベースの超解像顕微鏡法は、蛍光分子の局在を精密にマッピングすることにより、光学的回折限界を超える解像度を実現してきた。これにより、シナプスタグミンのクラスター化や、単一分子の光活性化局在顕微鏡(PALM)、確率的光再構成顕微鏡(STORM)などが可能となっている。しかし、蛍光ラベルの必要性が細胞毒性やラベル効率の問題を引き起こすため、非蛍光分子のラベルフリー超解像イメージングの重要性が増している。

光熱緩和局在顕微鏡法(PEARL)は、回折限界を超えたラベルフリー超解像イメージングを可能にする新しいアプローチである。PEARL顕微鏡法は、光熱顕微鏡におけるプローブビームの位置依存的な変調からサブ回折特徴を抽出し、電子吸収および振動吸収などの一般的な吸収プロセスに依存する。これにより、特別な吸収体を必要とせず、細胞内の脂肪滴やその分布のスペクトルおよび空間イメージングが可能となり、PEARL顕微鏡法は生物学、医学、材料科学における応用の可能性を広げている。

従来の問題点

 しかし、蛍光ベースの超解像イメージング技術は、ラベルの必要性が細胞毒性やラベル効率の問題を引き起こす。従来の非蛍光イメージング手法は飽和効果や非線形性に依存しており、特定の分子に限定される上、高出力レーザーパワーを必要とするため、広範な応用が難しい。また、赤外線(IR)やラマン分光法による超解像イメージング技術も、信号の弱さや解像度の限界により、広範な生物学的応用が制約されている。

解決方法の提案と結果

 そこで、本研究ではPEARL顕微鏡法を開発し、電子吸収に基づくE-PEARLおよび振動吸収に基づくV-PEARLを用いたラベルフリー超解像イメージングを実現した。E-PEARL顕微鏡法では、532 nmのパルスナノ秒レーザーをポンプビーム、638 nmの連続波レーザーをプローブビームとして使用し、金ナノ粒子(AuNPs)を用いた高解像度イメージングを行った。V-PEARL顕微鏡法では、405 nmのレーザーをプローブビームとして使用し、200 nmのポリメチルメタクリレート(PMMA)マイクロスフィアの高調波解析により、解像度を向上させた。

実験では、E-PEARLおよびV-PEARL顕微鏡法を用いて、脂肪滴やタンパク質の分布を高精度で捉え、細胞内の微細構造を解明することに成功した。例えば、軟骨芽細胞や酵母細胞のV-PEARLイメージングにより、従来の中赤外線(MIP)イメージングでは捉えられなかった300–400 nmの脂肪滴の小さな特徴が明らかになった。

使用されたCoboltのレーザー

波長: 405 nm (V-PEARL) および 532 nm (E-PEARL)

出力: 25 mW