Takeo Sasaki, Takaaki Yagami, Toshinobu Takashi, Kaita Suzuki, Gouta Ikeda, Yukihiro Ishii, Khoa Van Le, Yumiko Naka, “Photorefractive flexoelectric liquid crystal mixtures and their application to laser ultrasonics,” Optical Materials Express, Vol. 13, No. 3, 1 Mar 2023, 728-738, https://doi.org/10.1364/OME.484412
背景
レーザー超音波検査は、材料の形状や内部構造を非接触で非破壊的に調査する優れた方法である。例えば、パルスレーザーがアルミニウム板などの材料を照射すると、表面で超音波が発生し、内部の空洞や反対の表面で反射される。この超音波振動を検出することで、材料の形状や内部欠陥を遠隔から特定することができる。光干渉計やレーザードップラー振動計が超音波検出に用いられるが、材料の表面が粗い場合、信号の感度と解像度が低下するという問題がある。そこで、二光束混合法を用いることで、フォトリフラクティブ効果が高感度な振動検出に期待されている。フォトリフラクティブ効果は、材料の明るい部分で正の電荷(ホールや正イオン)と負の電荷(電子や負イオン)が生成され、その移動度の違いにより、明るい部分が負に帯電し、暗い部分が正に帯電することで発生する。これにより、明暗間に空間電荷電場が形成され、電気光学効果により屈折率格子が生成される。
従来の問題点
しかし、従来のフォトリフラクティブ材料は、応答時間が数十ミリ秒から数百ミリ秒と遅く、高速な計測性能が求められる環境では適していない。また、高い電圧が必要であり、実用性が低い。
解決方法と実験と結果
そこで、本研究では、フレクソエレクトリック液晶(PR-flex LC)を用いて、非接触のレーザー超音波計測システムを構築した。PR-flex LCは、外部電場が印加されるとバルク分極を示し、迅速に応答する特性を持つ。本研究では、PR-flex LCの二光束混合実験により、1400 cm^-1のゲイン係数と960マイクロ秒の応答時間を測定した。これにより、振動環境でも影響を受けにくい高精度な非接触超音波計測が可能となった。実験では、アルミニウム板の厚さや内部構造をレーザー超音波を用いて測定し、測定結果は実際の厚さと良好に一致した。また、キャビティを持つアルミニウム板を用いた実験では、キャビティの形状を高精度に測定できることを示した。これにより、レーザー超音波計測の感度が大幅に向上し、工業環境における振動の影響を受けずに高速な検出が可能となった。
