多点フォーカスレーザー差動干渉計による極超音速風洞における自由流れ擾乱の特性評価

Gillespie, G. I., Ceruzzi, A. P., & Laurence, S. J. (2022). A multi-point focused laser differential interferometer for characterizing freestream disturbances in hypersonic wind tunnels. Experiments in Fluids, 63(180). https://doi.org/10.1007/s00348-022-03522-6


 近年、超音速風洞内の高精度な流れの測定が求められており、そのために多くの計測技術が開発されている。特に、焦点を絞ったレーザ差動干渉計(Focused Laser Differential Interferometer, FLDI)は、高感度かつ高帯域幅の測定が可能な非侵襲的な技術として注目されている。FLDIは1970年代にSmeetsとGeorgeによって発明され、その後多くの改良が加えられてきた。例えば、Parzialeによる研究では、10MHz以上の高帯域応答とマイクロメートル単位の高い空間分解能を有することが示されている。また、FLDIは流れの焦点外の信号を排除する能力も持つ。これにより、風洞内の高周波数ノイズの測定において高い信号対雑音比が得られる。

 しかし、従来のFLDIシステムにはいくつかの課題がある。特に、従来の単一点または二点FLDIシステムでは、流れの詳細な特性を十分に把握することが難しい。また、従来の風洞内でのノイズ測定技術は、低帯域幅や流れの特徴を変調およびフィルタリングしてしまう弓状ショックの生成などの問題があり、精度に限界があった。加えて、従来の測定方法では、ノズル剪断層による信号の汚染が発生しやすく、正確なフリーストリームの特性評価が困難であった。

 そこで、本研究では、三点FLDIシステムを導入し、超音速風洞内のフリーストリーム擾乱の詳細な特性評価を行った。特に、流れ方向およびマッハ角に沿った同時測定を可能にするために、FLDIビームを分割して使用した。このシステムを用いて、異なるレイノルズ数および全エンタルピー条件下での実験を行い、コア流れ領域の密度変動とノイズの寄与度を分析した。その結果、音響擾乱が全体のノイズ環境において支配的であることが示された。また、低レイノルズ数条件ではノズル境界層が遷移的であることが示唆され、流れの間欠性が大きいことが確認された。さらに、FLDI信号の転送関数を適用することで、剪断層の影響を考慮した正確なコア流れ信号の測定が可能となった。この研究により、従来のFLDI技術の限界を克服し、風洞内の詳細な流れの特性評価が実現した。


Cobolt社のレーザー発振器の仕様

Cobolt Samba 532 nmレーザーを使用し、最大出力400 mWで運用した。