Plasmonic magnesium nanoparticles decorated with palladium catalyze thermal and light-driven hydrogenation of acetylene
Lomonosov, V., Wayman, T. M. R., Hopper, E. R., Ivanov, Y. P., Divitini, G., & Ringe, E. (2023). Plasmonic magnesium nanoparticles decorated with palladium catalyze thermal and light-driven hydrogenation of acetylene. Nanoscale, 15, 7420-7429. DOI: 10.1039/d3nr00745f
背景
金属ナノ粒子は、その独特の特性から、ヘテロ接触反応研究の中心的存在であり、ナノ材料の表面積対体積比が大きいため、多くの活性部位を提供し、触媒性能を向上させる。また、一部の金属は自由電子密度の振動である局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を持ち、これが強化された電磁場を生成し、化学反応の追跡に利用されている。LSPRの崩壊により、高エネルギーの生成物が生じ、これが分子の活性化に寄与する。
アンテナ・リアクターシステムとして知られるプラズモン増強触媒のアーキテクチャは、安価なプラズモンコアと希少な触媒金属を組み合わせることで、効率的な光触媒性能を発揮する。特に、Al NPベースのヘテロ構造が、選択的アセチレン水素化や二酸化炭素還元などの反応で優れた性能を示している。Mgは、紫外、可視、近赤外波長範囲でLSPRを維持できる地球に豊富なプラズモン金属として注目されており、これまでにAu、Ag、Fe、Pdとの部分的なガルバニック置換による二金属ナノ構造が作製されている。
従来の問題点
しかし、単一金属のPd触媒は、アセチレン水素化においてエチレンへの選択性が低く、過剰水素化によるエタンの生成が問題となる。また、従来のPd触媒は高温での触媒活性が高いものの、光駆動触媒としての効率が十分ではない。さらに、MgとPdの合金化が確認されないため、Pdの分散が均一でないと触媒性能が低下する可能性がある。
また、触媒の再現性や安定性にも課題があり、特に選択的水素化反応では、高いエチレン選択性を維持しながら完全なアセチレン転化を達成することが難しい。
実験内容
そこで、本研究では、部分的なガルバニック置換により作製されたパラジウムで装飾されたマグネシウムナノ粒子(Pd-Mg NPs)を使用し、アセチレンの選択的水素化反応における性能を評価した。このアプローチにより、エチレンへの選択性を55%に向上させ、完全なアセチレン転化を60°Cで達成した。これに加えて、光励起による触媒性能の向上が観察され、室温での反応速度が暗条件に比べて最大40倍に増加し、見かけの活性化エネルギーが半減した。
光駆動触媒実験では、532 nm、633 nm、785 nmのレーザーを使用し、それぞれの波長での反応速度と活性化エネルギーの変化を解析した。785 nmの光照射下では、エチレン生成率が特に高く、光励起による触媒反応の効率が向上することが確認された。また、Mg NPsの光吸収特性が反応活性化に寄与していることが示唆された。
これらの結果は、地球に豊富なプラズモン金属を使用した持続可能な触媒構造の設計に新たな道を開くものであり、工業的に重要な選択的水素化プロセスの効率向上に貢献する。
使用されたCoboltレーザー:532nmレーザー