Mengyao Zhou, Patrick José González, Ludo Van Haasterecht, Alperen Soylu, Maria Mihailovski, Paul Van Zuijlen, Marie Louise Groot. “Uniaxial mechanical stretch properties correlated with three-dimensional microstructure of human dermal skin”. Biomechanics and Modeling in Mechanobiology (2024) 23:911–925. DOI: 10.1007/s10237-023-01813-3.
背景
近年、皮膚の力学特性に関する研究が急速に進展している。その背景には、皮膚が外部からの外圧から体を保護するためのバリアとして機能し、その独特な機械的特性が重要であることがある。特に、コラーゲンおよびエラスチン繊維が皮膚の主要な構成要素として、皮膚の弾性および強度に寄与している。これらの繊維は、超解像顕微鏡技術である二光子励起自家蛍光および第二高調波発生顕微鏡により3次元的に観察され、その詳細な構造が明らかにされている。これにより、皮膚の主要な力学特性であるヤング率、最大応力、最大ひずみなどを定量化することが可能となった。これらの技術を駆使することで、皮膚の微細構造と力学特性との相関が高精度で解明されている。
従来の問題点
しかし、従来の研究では、皮膚の力学特性に対する年齢の影響や、コラーゲンとエラスチン繊維の密度、太さ、配向の詳細な関連性について十分に解明されていなかった。また、実時間での一軸伸張試験におけるコラーゲンおよびエラスチン繊維の配向変化を観察することが困難であった。さらに、皮膚の力学的応答の変動が大きく、これを統一的に説明する理論モデルの構築が求められていた。
実験結果
そこで、本研究では、24のヒト皮膚サンプルに対して、HÜBNER Photonics社製>50fs フェムト秒レーザーVALO Tidalを用いた二光子励起自家蛍光および第二高調波発生顕微鏡によりコラーゲンおよびエラスチン繊維を3次元的に観察した。また、一軸伸張実験を実施し、得られた応力-ひずみ曲線から、初期ヤング率、弾性ヤング率、最大応力、最大ひずみなどの力学特性を導出した。その結果、年齢がヤング率およびコラーゲン密度に負の相関を持つことが明らかになった。さらに、実時間モニタリングにより、エラスチン繊維は初期および線形領域で有意に配向し、コラーゲン束は主に線形領域で配向することが観察された。これにより、皮膚の力学特性に関する理解が深まり、将来的な皮膚組織の完全モデリングに向けた基礎的なデータが提供された。

使用されたフェムト秒レーザー
