水分解用レーザー誘起グラフェン電極の設計

Design of Laser-Induced Graphene Electrodes for Water Splitting

Daniela V. Lopes, Nuno F. Santos, Jorge P. Moura, António J.S. Fernandes, Florinda M. Costa, Andrei V. Kovalevsky


従来技術の長所

 水分解におけるエネルギーの効率的な貯蔵は、アルカリ電解による酸素とグリーン水素の生成に依存している。これにより、余剰エネルギーを貯蔵し、必要に応じて使用できる。レーザー誘起グラフェン(LIG)材料で作られた電極は、伝統的なグラフェン加工法と比べて多くの利点がある。その理由は、LIGが比較的シンプルで低コストで製造できるからである。特に、LIG電極は適切に金属でドーピングまたは修飾されると、水分解に有望であるとされている。LIGは三次元、多孔質、電気的に導電性のある材料であり、通常はポリイミド(Kapton®)基板上でレーザー彫刻によって生成される。これは、多くの点で還元グラフェン酸化物(rGO)と類似しており、高エネルギー密度のレーザービームを用いた適切な基材の熱分解によって形成される。LIGの製造は比較的簡単で、速くて安価であり、炉や不活性雰囲気、真空、高温、複雑な化学合成法を必要としないため、量産にも適している。さらに、LIGは多様な基材に適用可能であり、水分解用のハイブリッド電極触媒、センサー、スーパーキャパシタ、再充電可能な電池の触媒など、多くの潜在的な応用がある。

従来技術の問題点

 しかし、LIGの製造における一貫性の確保は、使用するレーザーのパラメータに大きく依存する。レーザー出力、走査速度、エネルギー密度、レーザー走査回数などの要因がLIGの品質と性能に影響を与えるため、これらのパラメータを正確かつ一貫して制御することが重要である。LIGの電気伝導性は、従来の手法で得られるグラフェン単層に比べて低く、機械的な安定性も劣る傾向がある。また、LIGは酸化の影響を受けやすく、特に酸素発生反応(OER)中に顕著である。

解決方法の提案と結果

 そこで、本研究では、レーザー誘起グラフェン(LIG)電極の設計および加工条件の最適化を行い、水分解における電極性能を向上させることを目指した。使用したレーザー発振器は、10.6 µmの波長を持つ連続CO2レーザーであり、レーザー出力は3.6 W、走査速度は100 mm/s、エネルギー密度は36 mJ/mm、レーザー走査回数は2回であった。この条件で生成されたLIG電極は、高い電気化学活性を示し、微細構造の劣化を最小限に抑えることができた。

実験の結果、低レーザー出力はLIGの安定性にとって重要な加工パラメータであることが示された。LIG電極は、アルカリ性媒体中での水分解において高い効率を示し、特に水素発生反応(HER)において優れた性能を発揮した。具体的には、LIG電極は3.6 Wのレーザー出力で生成された場合、最適な性能を示し、酸素発生反応(OER)中の微細構造の劣化も抑制された。LIG電極の微細構造の変化は、レーザー処理条件によって調整可能であり、高品質な多層グラフェンの形成が可能であることが確認された。例えば、GC_A2電極は3.6 W、100 mm/s、36 mJ/mm、2回の走査条件で生成され、高構造品質の多層グラフェンを形成し、有望なHER性能を示した。

さらに、電極の安定性試験では、0.1 Mおよび1.0 MのNaOH水溶液中で20時間の試験後も、GC_A2電極は顕著な電気化学的安定性を維持した。他のLIG電極も、適切なレーザー処理条件下で生成された場合、同様の安定性を示した。

本研究は、LIG電極の設計と加工の最適化に関する貴重な知見を提供し、水分解用の改良されたLIG電極の開発に向けた新たな指針を示した。