Donghyuk Kim, Hyunjung Kim (2023) Analysis of temperature behavior in biological tissue in photothermal therapy according to laser irradiation angle, Bioengineered, 14:1, 2252668, DOI: 10.1080/21655979.2023.2252668
背景
光熱療法(PTT)は、光熱効果に基づく治療技術であり、レーザーまたは光エネルギーを照射して腫瘍組織を加熱することで、切開を必要とせず出血も伴わないため、近年急速に研究が進められている。生体組織は温度に依存して様々な挙動を示し、一般的に温度が43°C以上に達するとアポトーシスまたはネクローシスが発生する。アポトーシスは43°Cから50°Cの範囲で自己破壊を行い、周囲の組織に影響を与えない現象であるのに対し、ネクローシスは50°C以上で発生し、内容物が漏れ出すことによる組織死である。PTTの効果的な実施には、アポトーシス温度範囲を維持することが重要であり、腫瘍組織の内容物が周囲組織に転移するのを防ぐ必要がある。
従来の問題点
しかし、従来の研究では、アポトーシスの温度範囲を維持するための定量的な情報が提供されておらず、様々な温度範囲での周囲正常組織への熱損傷が分析されていない。さらに、従来の研究は、レーザーが腫瘍組織に対して垂直に照射されることを前提としているが、実際の治療状況では腫瘍の位置や機械的な制約から垂直に照射することができない場合がある。
解決方法と結果
そこで、本研究では異なるレーザー照射角度での媒質内の温度分布を調査し、レーザー照射角度が腫瘍組織のアポトーシス温度維持および周囲正常組織の熱損傷にどのように影響するかを定量的に分析した。数値モデルを用いて、皮膚層内に発生する扁平上皮がん(SCC)に対するPTTを実施し、光熱療法の効果を定量的に評価した。具体的には、ゴールドナノ粒子(AuNPs)を光熱剤として使用し、異なるレーザー照射角度での温度分布をシミュレーションした。結果、レーザーの照射角度が増加するに従い、腫瘍組織内の非吸収領域が増加し、均一な加熱が妨げられることが確認された。また、周囲正常組織への熱損傷が増加するため、適切なレーザー強度とAuNPsの体積分率を設定する必要があることが示された。さらに、Cobolt社製レーザーを用いて数値シミュレーションを検証し、最適な治療条件を提案した。
使用されたCoboltのレーザー:
04シリーズ Rumba: 1064 nmレーザー
