ナノ粒子誘発細胞毒性評価のための高感度スクリーニング法としての定量的位相イメージング

Marzi, A., Eder, K.M., Barroso, Á., Kemper, B., Schnekenburger, J. “Quantitative Phase Imaging as Sensitive Screening Method for Nanoparticle-Induced Cytotoxicity Assessment.” Cells 2024, 13, 697. https://doi.org/10.3390/cells13080697

背景

 従来のバルク材料に比べて大きな表面積を持ち、高い触媒反応性や光学特性を有するナノ粒子は、その独特な物理的および化学的特性から、商業および医療応用において急速に普及している。これに伴い、ナノ粒子の環境および人間の健康への影響に対する関心が高まっている。動物実験の代替法の需要が増加する中で、ナノ粒子のリスク評価には適切なin vitro(試験管内)方法が重要である。デジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)は、定量的位相イメージング(QPI)の干渉計型バリアントとして、ナノ粒子の細胞毒性評価における有望な無標識法として示されている。DHMはサンプルとの相互作用が最小限であるため、さらなる解析に適しており、ナノ粒子の細胞への影響を正確に評価するための信頼性の高い方法として注目されている。

従来の問題点

 しかし、ナノ粒子は独特の特性を持つため、従来の生化学的試験方法との干渉が生じやすい。これにより、従来の方法ではナノ粒子の影響を完全に評価するために複数の試験が必要となり、一貫した結果を得ることが困難である。また、色素や蛍光を利用した光学的読み出しシステムにおいて、ナノ粒子の高い吸着能力や反応性が測定結果に誤差をもたらすことがある。

解決方法と実験結果

 そこで、本研究ではDHMを用いた無標識の細胞毒性評価法を提案することによって、これらの問題を解決した。DHMは、ポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子を用いた細胞の乾燥質量増加を測定し、同じ細胞集団に対する生化学的アッセイ(WST-8およびLDH)と直接比較した。具体的には、RAW 264.7マクロファージおよびNIH-3T3線維芽細胞の乾燥質量増加を定量化し、その後、WST-8を用いて細胞の代謝活性を測定し、LDHアッセイで細胞死を評価した。DHMは、ナノ粒子の細胞毒性効果を検出する感度が高く、生化学的アッセイと比較して優れた結果を示した。DHMを用いた評価では、低濃度のナノ粒子でも細胞毒性効果を検出できることが確認された。

使用されたCoboltのレーザー

波長532 nmのファイバー結合型レーザー(Cobolt 06-DPL)の照明光を使用することで、細胞培養のネイティブ状態を維持しながら分析を可能にした。