Hugo Levy-Falk, Océane Capelle, Thomas Liu, Emmanuelle Deleporte, Loïc Rondin, Jean-Sébastien Lauret, Daniel Medina-Lopez, Stéphane Campidelli. “Investigation of Rod-shaped Single Graphene Quantum Dot.” physica status solidi (b), In press, 10.1002/pssb.202300310.
背景
グラフェン量子ドット(GQDs)は、100個以上のsp2炭素原子を含む大きな多環芳香族炭化水素(PAHs)であり、近年多くの注目を集めている。GQDsは、単一量子エミッターとしての興味深い特性を持ち、安定した量子光エミッターとしても利用可能であることから、多くの応用が期待されている。例えば、GQDsフィルムは、増幅自発放出や近赤外レーザー発振を示すことがあり、その光学特性は非常に優れている。さらに、従来の「トップダウン」および「ボトムアップ」の合成法により、GQDsはさまざまな形状やサイズで合成可能であり、後処理による機能化や修飾によって特性を向上させることができる。最近では、78から132個の炭素原子を持つ棒状のGQDsが報告され、溶解度が大幅に向上し、標準的な精製技術を使用して不純物を除去することが可能になっている。このような高い純度と制御されたサンプルの特性は、単一分子レベルでの特性評価を可能にしている。
従来の問題点
しかし、GQDsの単一分子応用においては、ドットの凝集がその特性を大きく変化させる可能性があるという問題点がある。さらに、従来の三角形GQDsに比べて、棒状GQDsの合成と精製には複雑な工程が必要であり、不完全な酸化物や塩素化物などの副生成物が残る可能性がある。また、溶液中での発光スペクトルが不純物や凝集体の影響を受けることがあるため、単一分子レベルでの精密な特性評価が求められている。
解決方法と結果
そこで、本研究では、C96tBu8 GQDの単一分子特性評価を行い、その光学特性と安定性を明らかにした。具体的には、単一分子レベルでの実験により、このGQDが室温で非常にフォトスタブルな単一光子エミッターであることを示した。さらに、異なる濃度のサンプルに対する統計的研究により、合成されたサンプルの高い純度と低い副生成物含有量を強調した。これにより、C96tBu8 GQDの優れた溶解度と高いフォトルミネッセンス量子収率(約95%)を活用することができた。さらに、Cobolt社製レーザー(波長594 nm、出力100 mW)を使用してラスタースキャンおよびg(2)(τ)測定を行い、単一分子エミッターとしての特性を確認した。この研究は、GQDsが量子センシングなどの応用において有望な候補であることを示し、その安定性と高い量子収率により、より高度な実験や応用が可能であることを示唆している。
使用されたCobolt社製レーザー
波長: 594 nm 100mW Mambo
