Liu, Y., Wu, W., Zhang, X. “Self-injection-locked thin-film regenerative laser amplifier.” iScience 2024, 27, 109426. https://doi.org/10.1016/j.isci.2024.109426
背景
薄膜ポリマーレーザーは、様々なフォトニック構造を基にした設計により大きな研究関心を集めている。た、ファブリペロー共振器やウィスパリングギャラリーモード(円形や球形の共振器内で光や音が反射を繰り返すことによって形成される共振モード)、分布ブラッグ反射器(DBR)および分布フィードバック(DFB)マイクロキャビティが使用されている。これらの中で、DFBマイクロキャビティは周期的な誘電体、有機半導体、または金属ナノ構造を使用して構築されており、ポリマーレーザーの設計に最も広く用いられている。これにより、高強度、高方向性、および高スペクトル選択性を持つレーザー源の実現が可能となる。特に、自己注入ロック技術は追加のレーザー源を必要とせず、共振器とアンプ間のコヒーレント結合を実現するため、実用的なレーザー強度と制御可能なレーザーモードを達成できる点で優れている。
従来の問題点
しかし、これらのレーザーは出力強度が低く、ビームの発散が大きいため、実用的な応用が制限される。また、従来の注入ロックアンプでは、注入に追加のレーザーが必要であり、これによりシステムの複雑さが増し、実用性が低下する。さらに、薄膜レーザーアンプの注入ロックは、結合の難しさや小さな相互作用距離のため、実現が困難である。
解決方法と実験結果
そこで、本研究では、DFBマイクロキャビティとブラッグ反射器の組み合わせを用いた自己注入ロックレーザーアンプを提案した。これにより、DFBマイクロキャビティの出力が直接注入としてフィードバックされ、再生増幅プロセスが可能となる。具体的には、SY層とPRグレーティングの組み合わせによりアクティブDFBマイクロキャビティを形成し、自己注入ロックアンプを実現した。実験により、アンプ出力の増幅因子が20以上に達し、高コントラストの単一出力レーザースポットが得られた。また、ポリマースペーサー層の厚さを調整することで、増幅プロセスの光変換効率と出力レーザーモードの品質を最適化することができた。最適化されたスペーサー層の厚さにより、最高出力22mW、単一パルスエネルギー22nJ、および高品質の単一レーザースポットが達成された。この統合設計により、追加のシーディングレーザーを必要としない独立した操作が可能となり、実用的な薄膜ポリマーレーザー装置の応用が示唆される。

使用されたCobolt社のレーザー
355nm固体レーザー Zouk
自己注入ロック薄膜再生レーザーアンプの実験において、干渉リソグラフィを用いたブレッグ回折格子の製作用に使用された。