Jee Myung Yang, KyungA Yun, Jehwi Jeon, Hae Young Yang, Bora Kim, Sunhong Jeong, Junyeop Lee, Wang-Yuhl Oh, Akiyoshi Uemura, Joon Seon Song, Pilhan Kim, Joo Yong Lee. “Multimodal evaluation of an interphotoreceptor retinoid-binding protein-induced mouse model of experimental autoimmune uveitis.” Experimental & Molecular Medicine 2022, 54, 252–262. https://doi.org/10.1038/s12276-022-00733-z
背景
ブドウ膜炎は、ブドウ膜の炎症を特徴とする疾患であり、視力損失の5〜10%を引き起こす。自己免疫または非感染性ブドウ膜炎は、神経網膜における全身性の炎症状態を伴い、視力を脅かす難治性の状態である。特に、網膜血管の炎症が血管の漏出や閉塞を引き起こし、網膜の非再生細胞の重大な破壊をもたらすことがある。このような背景から、ブドウ膜炎患者における血管炎の理解と制御の必要性が高まっている。網膜蛋白質、特にインターフォトレセプターレチノイド結合タンパク質(IRBP)に対する自己免疫応答が見られる患者が多く、IRBPは視覚サイクルにおいて重要な役割を果たす蛋白質であり、実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)の誘発に広く使用されている。近年の研究では、IRBP免疫化により誘発されるEAUが、血管漏出や浮腫を特徴とし、網膜内血液網膜関門(BRB)の破壊が重要な病因であることが示されている。また、BRBは血液脳関門(BBB)と同様に、タイトジャンクションによる細胞間輸送制限と不活性トランスサイトーシスによる細胞内輸送制限に依存している。近年、網膜血管疾患の病因においてトランスサイトーシスの役割が注目されており、特に非感染性ブドウ膜炎における網膜血管炎の病態生理学に関する新たな知見が得られている。
従来の問題点
しかし、EAUにおけるBRBの破壊がどのようにして起こるのかは十分には解明されていない。特に、炎症性細胞の活性化やトランスサイトーシスの誘導が血管漏出にどのように寄与するかについての理解が不足している。また、従来の研究では、IRBP免疫化により誘発されるEAUモデルの慢性再発性ブドウ膜炎を再現することが難しいという課題がある。さらに、網膜血管の深層層における血流減少や微小血管の構造変化に関するデータも限られており、これらの問題点を解決するためには、より高度な解析技術と新たな実験モデルの開発が求められている。
解決方法と実験結果
そこで、本研究では、IRBP免疫化により誘発されたEAUマウスモデルを用い、マルチモーダルイメージング技術を駆使して血管表現型を詳細に解析した。具体的には、IRBPまたはビークルを全身投与したC57BL/6マウスに対して、眼底写真撮影、光干渉断層撮影(OCT)、蛍光色素を用いた生体内ライブ共焦点イメージング、OCTアンジオグラフィー(OCTA)、およびエレクトロレチノグラフィー(ERG)を実施した。その結果、EAUマウスでは、周囲血管炎、硝子体炎、眼底写真およびOCTで表層網膜炎症が観察された。さらに、免疫細胞の浸潤や血管透過性の変化が確認され、免疫細胞抑制によりトランスサイトーシスの改善が見られた。また、in vivo共焦点イメージングにより、好中球の浸潤や血管炎が明らかになり、OCTAでは深層毛細血管層における血流の著しい減少が示された。機能解析では、免疫化3週後には暗所視応答が保持されていたが、光所視および暗所視応答はほとんど検出されなかった。これらのデータは、炎症性細胞の活性化および内皮細胞におけるトランスサイトーシス誘導が、ブドウ膜炎における血管漏出の主要な病因であることを示唆している。
使用されたCobolt社のレーザー
Cobolt MLD 488nm、Cobolt Jive 561nm、Cobolt MLD 640nmの連続波レーザー発振器を使用し、これらのレーザーは、カスタム構築されたレーザースキャニング共焦点顕微鏡システムにおいて励起光源として利用された。