ゴルジ体における糖転移酵素のサブゴルジ局在を3D超解像イメージングで解読

Hirokazu Yagi, Seigo Tateo, Taiki Saito, Yusaku Ohta, Emiko Nishi, Saemi Obitsu, Tatsuya Suzuki, Supaphorn Seetaha, Charles Hellec, Akihiko Nakano, Takuro Tojima, Koichi Kato. “Deciphering the sub-Golgi localization of glycosyltransferases via 3D superresolution imaging”.

背景

 ゴルジ体は、タンパク質の修飾と輸送において重要な役割を果たすオルガネラである。特に、タンパク質のN-グリカン修飾は、タンパク質の機能と運命を決定するために重要である。このプロセスは、ゴルジ体内の特定の部位に局在する糖転移酵素によって行われる。これらの酵素は、シス、メディアル、トランスゴルジシスチルナエといったゴルジ体の異なる部分に分布しており、その位置に応じて異なる役割を果たす​​。従来の研究では、超解像顕微鏡技術を用いてこれらの酵素の詳細な分布を観察することが可能であり、ゴルジ体内の酵素分布の精密な解析が行われてきた。特に、3D超解像イメージングは、従来の光学顕微鏡では捉えきれないナノメートルスケールでの観察を可能にし、ゴルジ体の微細構造の理解に大きく貢献している​​。

技術の問題点

 しかし、糖転移酵素の局在解析において、従来の技術では酵素間の共局在の定量的評価が困難であった。また、各酵素のサブゴルジ局在の微細な違いを十分に捉えることができず、酵素の分布パターンの詳細な理解が不十分であった​​。さらに、異なる酵素間の相互作用や分布のばらつきを正確に解析する手法が不足しており、酵素の局在メカニズムの解明には限界があった​​。

解決方法と結果

 そこで、本研究では3D超解像イメージングを用いて、糖転移酵素のサブゴルジ局在を詳細に解析した。具体的には、二色の蛍光タンパク質で標識した糖転移酵素を同時に観察し、その共局在度を定量化することで、酵素の分布パターンを高精度で解析した​​。さらに、糖転移酵素のN末端領域(細胞質領域、膜貫通領域、幹セグメント)を操作することで、これらの領域が酵素のサブゴルジ局在に与える影響を調査した​​。結果として、N末端領域を共有する酵素は高い共局在度を示し、この領域が酵素の局在を決定する重要な要因であることが明らかになった​​。

 実験にはCobolt社製レーザー(473 nm, 50 mW; 561 nm, 50 mW)およびCrystaLaser社製レーザー(671 nm, 100 mW)を用いた​​。これにより、ナノメートルスケールでの精密な蛍光イメージングが可能となり、各酵素の詳細な分布パターンを高精度で解析することができた。

以上の結果から、本研究は糖転移酵素の局在メカニズムの理解に重要な知見を提供し、タンパク質の糖鎖修飾の精密な制御に向けた新たなアプローチを示した。これにより、臨床応用に向けた糖タンパク質の発現や修飾のプログラミングが進展することが期待される​​。

使用されたCoboltのレーザー

473nmレーザー Blues
561nmレーザー Jive