ナトリウム(Na)ドーピングによるZnO薄膜の電気的および光学的特性の探求

Silva, A.L.C., Vargas, L.M.B., Peres, M.L., Teodoro, M.D., de Godoy, M.P.F. “Exploring Na Doping in ZnO Thin Films: Electrical and Optical Insights.” Coatings 2024, 14, 510. https://doi.org/10.3390/coatings14040510

背景

 近年、半導体酸化物のp型特性の実現が重要な研究課題となっている。特に酸化亜鉛(ZnO)は、約3.4 eVのギャップエネルギーを持ち、可視光領域での高い光透過性と紫外線蛍光のピコ秒スケールの励起子寿命を特徴としている。この特性は、シンチレーション検出器やオプトエレクトロニクス技術において重要な役割を果たす。また、ZnOは液晶ディスプレイや光トランジスタ、太陽電池およびセンサーの電極としても利用されており、その透明導電性酸化物としての技術は多岐にわたる応用が期待されている。従来、アルミニウム(Al)やガリウム(Ga)をドープすることで低抵抗率の薄膜が得られており、これらの技術はスパッタリング、スプレーパイロリシス、化学気相成長法、ゾルゲル法、分子線エピタキシーなどの方法で実現されてきた。

従来の問題点

 しかし、p型ZnO膜はその低い安定性とZnO p-nホモ接合における良好な整流特性の欠如から、結果の再現性が難しい。また、Li、N、Na、P、Mgなどの元素を用いたp型伝導性の実現は成功しているが、これらの元素の補償メカニズムによる制約がある。特に、Naドーピングに関しては、伝導度の変化や再現性の問題が指摘されている。

解決方法と実験結果

 そこで、本研究ではNaをドープしたZnO薄膜を用いて、電気的および光学的特性の改善を図った。スプレーパイロリシス法を用いて、ZnOに2%、4%、6%、10%のNaをドーピングした薄膜を作製し、これらのサンプルを異なる雰囲気(Ar、N2、O2)でアニール処理を行った。その結果、NaドープZnO薄膜は特定の温度範囲(約280~380 K)でn型からp型への転移が観察され、キャリア濃度が増加した。また、アニール処理により、ZnO薄膜の欠陥関連の発光が増強され、特に赤色の発光が顕著になった。光学特性の評価には、Cobolt社製の Zoukレーザー(出力15 mW、波長355 nm)を用いた微小フォトルミネッセンス(µPL)測定を行った。この測定により、NaドープZnO薄膜のRGB原色に対応する発光特性が明らかになった。

さらに、電気抵抗の温度依存性を測定し、アクティベーションエネルギーを評価した結果、Naドーピングおよびアニール処理により、導電性に寄与する深い欠陥レベルが低減し、導電率が向上することが確認された。これにより、NaドープZnO薄膜が透明導電性酸化物としての応用において、優れた特性を示すことが示唆された。この研究は、NaドープによるZnO薄膜の電気的および光学的特性の向上に寄与し、将来的なオプトエレクトロニクスや透明導電性酸化物の応用において重要な知見を提供するものである。

Cobolt社のレーザー発振器仕様

355nmレーザー Zouk