George Kourmoulakis, Sotiris Psilodimitrakopoulos, George Miltos Maragkakis, Leonidas Mouchliadis, Antonios Michail, Joseph A. Christodoulides, Manoj Tripathi, Alan B. Dalton, John Parthenios, Konstantinos Papagelis, Emmanuel Stratakis, George Kioseoglou. “Strain distribution in WS2 monolayers detected through polarization-resolved second harmonic generation.” Scientific Reports 2024, 14:15159. https://doi.org/10.1038/s41598-024-66065-2
背景
二次元材料である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、その優れた光学的および電子的特性により、次世代の電子デバイスにおいて注目されている。特に、単層TMDは直接バンドギャップを有し、室温でも強い発光を示すことができるため、超薄型光電子デバイスの開発において重要である 。さらに、TMD単層は反転対称性を持たず、第二次高調波発生(SHG)信号を強く発することができる。
偏光分解SHG(P-SHG)イメージングは、TMD単層の結晶構造を非破壊的に高解像度で検出するための有望な手法である。この技術は、各ピクセルごとに結晶のアームチェア方向を特定し、結晶品質や層間の相対的な角度(ツイスト角度)をマッピングすることができる 。また、P-SHGイメージングは、他の非線形光学技術と組み合わせることで、電子デバイスの設計、特性評価、および品質管理において補完的な手法として機能する可能性がある 。
技術の問題点
しかし、TMD単層におけるひずみの検出と特性評価は難しい問題である。従来の方法では、ひずみの影響を受けやすい振動モード(例えば、Raman分光におけるE2gモード)を利用することが一般的であるが、これらの手法は時間がかかり、解析範囲が限られる 。また、PL(フォトルミネッセンス)分光などの他の手法は、ひずみの影響を受けるため、精度が低下することがある 。
さらに、ひずみの均一性を高解像度でマッピングする手法が限られているため、広範囲での迅速なひずみ検出が求められている。特に、従来の方法では、大面積でのひずみ分布の非破壊的かつ迅速な検出が困難であった 。
解決方法と実験結果
そこで、本研究ではフェムト秒レーザーを用いて、偏光分解二次高調波発生(P-SHG)イメージングによるシリンダー状のウェル上に配置されたWS2単層膜におけるひずみ分布を検出する手法を提案した。P-SHGデータをピクセルごとにフィッティングすることで、結晶のアームチェア方向の空間分布を特定し、ひずみが存在する領域に特徴的なクロス型パターンが現れることを確認した 。このクロス型パターンは、AFM(原子間力顕微鏡)およびRamanマッピングによって独立して確認され、ひずみの存在を明確に示すものである 。
この手法は、大面積のひずみを迅速かつ非破壊的に検出することができるため、先進的な光電子デバイスの設計、製造、および品質管理において有用であると期待される 。本研究では、Cobolt社製のレーザー発振器(波長515nm、出力0.1mW未満)をRaman分光測定に用いて、ひずみの存在を確認した 。
これにより、偏光分解SHGイメージングが、TMD単層膜におけるひずみの迅速かつ高解像度な検出に有効であることが示された。Cobolt社のレーザー発振器は、高い波長安定性と低出力での高感度な測定を可能にし、ひずみ検出の精度向上に寄与した。
使用されたCoboltレーザー
515nmレーザー Fandango
