レーザー超音波による金属円筒表面微小亀裂の自動検出方法

Zhang, Y.; Xu, Z.; Feng, S.; Zhang, H.; Wang, W.; Liu, Y.; Zhu, B.; Shi, W. “Laser Ultrasonic Automatic Detection Method for Surface Microcracks on Metallic Cylinders.” Photonics 2023, 10, 798. https://doi.org/10.3390/photonics10070798

背景

 金属円柱は鉄鋼業界において重要な製品であり、回転部品として広く使用されている。その表面品質は加工工程に大きな影響を与える。特に、製造過程で発生する表面微小亀裂は、その後の塑性加工中に拡大する恐れがあるため、非破壊検査技術が重要視されている。従来の非破壊検査方法として、磁粉探傷試験(MT)、浸透探傷試験(PT)、渦電流探傷試験(ECT)、および超音波探傷試験(UT)が一般的に使用されている。これらの技術は、それぞれの材料特性に応じて、亀裂の形状、位置、および深さを高精度で検出することができる。特に、UTは高い検出効率を持ち、工業自動化検査に広く利用されている。

従来の問題点

 しかし、MTは強磁性材料の表面検出に限定されており、銅やアルミニウムなどの非強磁性材料には適用できない。PTは表面開放欠陥の検出に有効だが、化学汚染を引き起こしやすい。また、ECTは多様な金属や合金の導電性材料の欠陥検出に適しているが、欠陥の特性を信号から直接明らかにすることは難しく、後続の研削作業に対する技術的参考情報を提供できない。さらに、従来のUTは、ピエゾ電気素子を用いた超音波探傷技術が一般的だが、これは長距離での励起および検出が困難であり、時空間分解能が低い。

解決方法と結果

 そこで、本研究では、レーザー励起表面弾性波(SAW)を用いたレーザー超音波自動検出システムを構築し、金属円柱の表面微小亀裂を検出する方法を提案した。このシステムは、位相反転が完全に起こる角度を検出点として選び、信号の一貫性とモデルの精度を向上させることを目指している。Bスキャン画像を用いて微小亀裂の位置を視覚的に特定し、伝搬SAWの時間周波数解析を通じて、亀裂の深さを予測するモデルを確立した。特に、Cobolt社製の532 nmシングルロングモード連続波レーザー(Cobolt 05-01 Samba)を光源として使用し、表面の粗い金属円柱でも適用可能な高い信号対雑音比を実現した。また、実験結果に基づき、亀裂の絶対深度に基づく予測モデルを提案し、亀裂の方向が信号エネルギーに与える影響も考慮した。この方法により、金属円柱表面の微小亀裂の迅速な研削に対する参考情報を提供し、視覚化と高効率を兼ね備えた検出が可能となった。

※Bスキャン画像(B-scan image:超音波検査や他の非破壊検査技術において一般的に使用される用語です。Bスキャンは、特定の方向に沿った断面画像を生成する超音波画像の一形式をいう。

使用されたCoboltのレーザー

532 nmレーザー Samba