Newman, P. L. H., Yip, Q., Osteil, P., Anderson, T. A., Sun, J. Q. J., Kempe, D., Biro, M., Shin, J.-W., Tam, P. P. L., Zreiqat, H. “Programming of Multicellular Patterning with Mechano-Chemically Microstructured Cell Niches.” Advanced Science 2023, 10, 2204741. https://doi.org/10.1002/advs.202204741
本研究の重要性
この研究は、複雑な多細胞パターン形成を制御するための新しい方法を提供するものである。多細胞パターン形成は、生体組織の機能的構造を再現するために不可欠であるが、従来の方法では再現性が低く、非生理的な構造が形成されることが多かった。本研究では、機械的および化学的に微細構造化された細胞ニッチを用いることで、細胞の分化や機能を空間的に制御し、生体組織に近い構造を形成することができる。これにより、再生医療や組織工学の分野において、より精密で機能的な組織モデルの開発が可能となる。また、この技術は、生体内での細胞間シグナル伝達や組織の発生メカニズムを解明するための新しいツールとしても重要である。
従来技術
これまで、多細胞パターン形成の研究においては、主に外部からのモルフォゲン刺激による自己組織化に頼ってきた。これにより、ある程度の組織構造を形成することはできたが、再現性が低く、細胞の組成や構造がランダムに決定されるという問題があった。また、従来の3Dプリンティング技術では、材料の機械的特性や化学的特性を微細に制御することが難しかった。
従来の問題点
しかし、従来の方法は局所的なシグナル伝達の制御が難しく、細胞の接着や機械感受性、転写因子との局所的な相互作用、さらには多細胞組織のパターン形成において再現性が低いという問題点がある。
解決方法と結果
そこで、本研究では機械的および化学的に微細構造化されたニッチを用いることによって、これらの問題を解決した。具体的には、異なる機械的特性および化学的特性を持つフォトレジストを使用して、複雑な細胞ニッチ環境を作製するための新しい3Dプリンティング方法を開発した。この方法により、局所的な機械的および化学的シグナルを精密に制御し、細胞の接着、機械感受性、分化をプログラムすることができた。また、Cobolt社製レーザーを使用してフォトレジストを選択的に重合し、微細構造を持つ材料を作製した。

Cobolt社のレーザー発振器の仕様
波長405nmのレーザーをがフォトポリマーの選択的重合に使用された。最小線幅は7μmであった。
