Casas Moreno, X., Pennacchietti, F., Minet, G., Damenti, M., Ollech, D., Barabas, F., Testa, I. “Multi-foci parallelised RESOLFT nanoscopy in an extended field-of-view.” Journal of Microscopy, 2023, 291, 16-29. https://doi.org/10.1111/jmi.13157
従来技術の長所
超解像顕微鏡は、光の回折限界を超えた空間的な詳細を得るために重要であり、近年、生命科学分野で急速に研究が進められている。従来の超解像顕微鏡技術として、座標ターゲットスイッチング技術がある。この技術は、発光分子の集団を空間的に限定し、顕微鏡の点広がり関数を効果的に縮小することで、高解像度の画像を得るものである。特に、RESOLFT(Reversible Saturable Optical Fluorescence Transitions)は、低光量でのライブセルイメージングに適していることから注目されている。RESOLFTでは、可逆的にスイッチ可能な蛍光タンパク質を使用し、低光量での超解像イメージングが可能であるため、生細胞の観察に適している。従来のMoNaLISAシステムは、50 × 50 μm²の視野で高い光学的断面形成能力を持ち、3次元でのタイムラプスイメージングが可能である。また、STEDやSMLMなど他の超解像技術と比較して、RESOLFTはより低い光量で動作するため、生細胞への負担が少ないという利点がある。
従来の問題点
しかし、従来のMoNaLISAシステムの視野は50 × 50 μm²と限られており、広範囲のイメージングには限界があった。STED技術では、高い光量が必要であるため、並列化の度合いが制限され、視野が20 μm程度に限られている。また、SMLM技術では、長時間の記録が必要であり、ライブセルイメージングには適さない。
解決方法と結果
そこで、本研究では、光効率の良い光学系を利用して、MoNaLISAシステムの視野を4倍以上に拡大し、100 × 130 μm²の視野を実現した。この新しい設定では、視野内の高解像度イメージングが可能となり、ライブセルのタイムラプスイメージングを30分間連続して行うことができた。具体的には、カスタム設計されたマイクロレンズと回折格子を使用して、照明領域を拡大し、レーザーの出力を最大限に活用することによって達成された。これにより、ポストシナプス密度タンパク質Homer1cの超解像イメージングが広視野で可能となり、神経細胞内の構造を詳細に観察することができた。また、Cobolt社製レーザー(405 nm、473 nm、488 nm)を使用し、それぞれの波長で効率的に光を照射することで、視野全体にわたる均一な解像度(43–81 nm)が得られた。これにより、従来の技術では困難だった広範囲での高解像度イメージングが実現し、細胞全体の構造解析やダイナミクスの観察が可能となった。

Cobolt社製レーザー発振器の仕様:

