Gulotta, A., Polimeni, M., Lenton, S., Starr, C.G., Stradner, A., Zaccarelli, E., Schurtenberger, P. “Combining Scattering Experiments and Colloid Theory to Characterize Charge Effects in Concentrated Antibody Solutions.” Mol. Pharmaceutics 2024, 21, 2250−2271. https://doi.org/10.1021/acs.molpharmaceut.3c01023
研究の重要性
本研究は、濃縮抗体溶液の電荷効果を明らかにすることに焦点を当てている。単クローン抗体(mAb)の溶液特性は、電荷がタンパク質間相互作用に与える影響に大きく依存しており、これは医薬品製剤の安定性や有効性に直結する。特に、高濃度でのmAb溶液は、凝集や自己組織化に対する安定性、低粘度、および低曇度が求められるため、電荷の寄与を理解することは重要である。この研究は、電荷がこれらの物理化学的特性にどのように影響を与えるかを体系的に調査することで、新たな製剤設計の基盤を提供する。
従来の研究
これまで、mAbのネット電荷を特定するために、電気泳動移動度、二次ビリウス係数、拡散相互作用パラメータの測定などの標準的な実験手法が行われてきた。しかし、これらの実験技術で得られた値は、抗体の実際の総ネット電荷や既知の分子構造に基づく理論的予測との直接的な関連性を見出すことが困難であった。実際、電気泳動移動度や静的構造因子、集団拡散係数、相対粘度など、様々な物理量に対する電荷の影響は、mAbのコロイド安定性において重要な役割を果たすことが確認されている。
従来の問題点
しかし、これらの手法は抗体の全体的なネット電荷を直接的に評価することが難しいという問題点がある。これにより、理論モデルとの整合性が乏しく、実際の溶液特性を予測する上での限界が生じている。
解決方法と結果
そこで、本研究では、DLS、SLS、SAXSなどの散乱実験とコロイド理論を組み合わせることによって、濃縮抗体溶液の電荷効果を詳細に評価する方法を提案した。具体的には、電気泳動測定、静的および動的光散乱、小角X線散乱、トレーサ粒子ベースのマイクロレオロジーを用いて、IgG1 mAbの溶液特性を濃度とイオン強度の関数として系統的に調査した。この研究において、抗体の形状および電荷の異方性を考慮に入れることが重要であることを強調し、既存のコロイドモデルの潜在能力と限界を議論した。また、Cobolt社製レーザーを動的および静的光散乱測定の光源として使用し、電荷の寄与を詳細に分析した。
Cobolt社製レーザー発振器の仕様
