水性塗料の開放時間と膜形成の定量化におけるレーザースペックルイメージングの活用

Semerdzhiev, S. A., van der Kooij, H. M., Fokkink, R., van der Gucht, J., & Sprakel, J. “Quantifying the Open Time and Film Formation of Waterborne Coatings with Laser Speckle Imaging.” ACS Applied Optical Materials, 2024, 2, 750−760. https://doi.org/10.1021/acsaom.4c00051

背景

 水性塗料の乾燥プロセスの研究は、塗料の性能や品質を最適化するために重要である。従来の乾燥時間の測定方法には、指で触れるテストや機械的な乾燥時間記録装置があり、これらは一部で標準化された手法として利用されている。また、MRI(磁気共鳴画像法)や動的光散乱(DLS)など、高精度で定量的な手法も存在する。特にMRIベースの手法は、精密で定量的なデータを提供する点で優れている。
また、乾燥過程における内部動態の観察には、透過性のあるサンプルに対して従来の光学的手法が有効である。動的光散乱(DLS)は、乾燥の進行を研究するための確立された方法であり、一般的なコーティング剤の乾燥段階を詳細に分析することができる​。

従来の問題点

 しかし、これらの方法にはいくつかの問題点がある。まず、指で触れるテストや機械的な乾燥時間記録装置は、テスト条件や圧力の変動により結果が大きく異なる可能性があり、客観性や再現性に欠ける。また、MRIベースの手法は非常に高価であり、一般的に利用可能ではないという欠点がある​。
さらに、塗料の乾燥過程の内部動態を実験的に観察することは非常に難しい。塗料は通常不透明であるため、従来の光学的方法を用いることができず、また乾燥現象はさまざまな時間と長さのスケールに及ぶため、すべてのプロセスをカバーする手法が限られている​。

解決方法と結果

 そこで、本研究では、レーザースペックルイメージング(LSI)を使用し、不透明な水性ラテックス塗料の内部動態を微視的な解像度で明らかにする手法を提案している。この方法により、7桁の時間範囲にわたる動的プロセスを測定し、定量的かつ客観的に現実的な塗料の開放時間を測定することが可能となった。LSIを使用して、湿度や温度などの環境パラメータが開放時間に与える影響を体系的に調査し、その結果を拡散制限蒸発モデルを用いて解釈した​。
また、この手法は、後期乾燥段階における膜形成の詳細な追跡も可能にし、相転移の発生を検出し、この現象がラテックス粒子の硬さなどの重要なパラメータに依存することを明らかにした。この方法により、ラテックス塗料の乾燥の重要な段階を高精度で時間刻印することができ、改良された水性塗料の合理的な設計に新たな手がかりを提供する​。

使用されたCoboltのレーザー

Coboltの532nmレーザーSamba(出力1W)が乾燥中の不透明なコーティング剤内部の動態を高い空間分解能で解析するために使用された。