Arianpoura, A., Nelsona, G., Christiansona, T., Cliftonb, W., “Holographic Optical Element for LIDAR scanning systems,” Proc. of SPIE Vol. 12893, 1289304, 2024.
背景
LIDAR(Light Detection and Ranging)走査システムは、詳細で正確な3次元点群を提供し、精密な地形マッピングとモデリングを実現することから、近年急速に研究が進められている。高高度での運用需要の増加に伴い、必要な光子数を確保するためにアパーチャサイズを拡大する必要がある。従来のLIDARシステムでは、軸方向に回転するウェッジプリズムを使用して広い視野をカバーすることが一般的である。この方法では、システムの前方にスキャナーを配置することで収集光学系が簡素化され、大きなアパーチャの光学システムに適合する。しかし、この方法には回転バランスの維持が難しく、特に数度を超える角度では不安定になるという問題がある。この問題を解決するために、ホログラフィック光学素子(HOE)が代替の走査光学系として注目されている。HOEは、回転の対称モーメントを持ち、広い走査角度やアパーチャサイズにも対応でき、従来のウェッジプリズムに比べて安定性が高いことが特徴である。
従来の問題点
しかし、従来のウェッジプリズムベースのスキャナーでは、スキャン角度の増加に伴い、ウェッジ角度も大きくなるため、光学系の非対称性による回転安定性が損なわれる。これにより、大口径の非対称モーメントを安定させることが難しくなり、屈折光学系に大きなストレスがかかり、運用スキャン速度が制限される。また、ホログラムの記録には赤外線スペクトルの使用が不可欠であり、視覚的なフィードバックが得られないため、整列プロセスが困難になることも問題点である。
提案と実験結果
そこで、本研究では、従来の屈折ウェッジベースのスキャナーに代わり、ホログラフィック光学素子(HOE)を走査コンポーネントとして使用することで、これらの問題を解決した。HOEは、屈折率の振動により位相変化を引き起こし、特定の角度で効率的に回折ビームを生成する。本研究では、GeigerモードのLIDARセンサーにHOEを実装し、対称モーメントを維持しながら広いスキャン角度に対応できることを示した。HOEの製造には、角度を分離した二つのビームを干渉させて線形フリンジパターンを生成する方法を採用し、視覚フィードバックを提供するために532nmのレーザーを使用した。ホログラムは1064nmの動作波長に適応するように調整され、最終的なポリッシュ工程により、接着されたHOEの両外面を平坦化し、透過波面誤差を大幅に改善した。これにより、λ/12.7 RMSの波面誤差と70%の回折効率が達成された。
実際の運用では、HOEを使用したLIDARシステムが高度13,000フィートでの地形スキャンに成功し、横方向の空間解像度が最大50ポイント/メートル、垂直方向の解像度が10cmであることが確認された。これにより、高品質の3Dポイントクラウドが生成され、ユーザーに必要な地形情報が提供された。

Cobolt社のレーザー発振器の仕様
